piroyan's Lablog

実験の合間に思いついた戯言などをつらつらと

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ゴクドウノオンナ

こんな夢を見た。

とても広い和式の家屋。周囲が回廊になっている、50畳は優にあろう大広間。
自分は、そこの中心にポツンと敷かれた布団を前にして佇んでいる。
光源は、四方の入り口に立てられた行灯4対の計8個のみ。
淡い赤金色の光が、遠くからぼんやりと自分の居場所を照らしている。

どうやら、自分は極道の家に婿入りしたようだが、妻は病床に臥せっているらしい。
小振りに盛り上がった布団の中から声がする。

「……どうぞお座りになってくださいましな……」



この妻と思しき女性の声は、か細かったが、柔らかく、とても丁寧だった。
言われた通り、その場に座る。

しばらく沈黙が続く。

このままでは沈黙が永遠に続くように思われたので、
こちらから口火を切って質問を投げかけてみた。

「……一体、どうしたん?」

この言葉がこの場に相応しいのかどうか、自信は持てなかったが、
取り敢えず状況を把握するきっかけにはなるだろうと思った。

すると布団の中から返事が返って来た。

「ウチはもうダメかも知れませぬ……」

少し京言葉の混じったような、しっとりとした声。
布団をすっぽりと被っている為、顔は見えないが、
その声は透き通るようにはっきりと聞こえた。

自分は、この女性を知っている。
いや、自分の妻なのだから、知っていて当然だ。
なのに、顔をハッキリと思い出せない。
何故だ……?

この布団を捲れば、答えはそこにあるのに、捲る勇気が無い。
何故だ……?

心の中で自問自答をしばらく繰り返してみたが、
今生の別れとも取れる言葉が気になったので、
その件についてもう一度尋ねてみることにした。

「一体、どうしたん?」

すると布団の中の女性は

「そんなん、聞くまでも無くとも分かってらしたやろ……」

と答えをはぐらかす。

一向に分からない。
なにせ、自分の記憶は、ここに佇んだ以降のものしか無い。
取り敢えず分かっていることは、ここは極道の家で、目の前の女性は自分の妻で、
どうやら病気らしいということだけだった。

またしても沈黙がねっとりと覆い被さってくる。

いったいいつまでこの状態が続くのだろうか?
この部屋に時計は無いが、まるで、時間の流れから切り抜かれたかのように
時が止まっているようだった。
ここに居ると、何故、今自分がこうしているのかすら判らなくなってくる。

次の言葉を探していたが、結局見つけられずに黙っているしかない自分に
苛立たしさを覚えた。

そしてついに焦燥感に駆られて、私は無言のまま布団に手をかけた。

女性は黙っている。

この手を上にあげれば、全てが理解出来るような気がした。
また、この真実を見届けなければ、この永遠から抜け出せないような気もした。

「捲るぞ、捲るぞ……一斉の―――」

と、心でリズムを取り、一気に剥いで見た。

するとそこに想像した人影は無く、一条の白い煙が立ち昇り、そして消えたのみだった。

「……???」

声も出ないまま、まるでキツネにでもつままれたかのようにポカンと煙の消えた宙を
みつめていた。

そして、しばらくして重要な事を一つ思い出して、我に返った。

それは、会社に遅れそうだということだ。
どうやら時間の流れは正常に戻ったようだった。

「そろそろ遅刻する旨を連絡しないとマズいな……」

そんな事を考えながら、空になった布団を後にしてその部屋を出て行った。



---
……そして、夢から覚めたのでした。

久々に、なんだか幻想的な(?)感覚の夢を見ました。
何故、極道の家かと思ったのかは謎ですが、その家は、確かに極道の家でした。
オチにも何も結びついていませんが。。汗

拙い文章ですが、私の夢の中で感じた独特の空気を同じように感じて頂けると幸いです。

| 雑文::夢日記 | 10:48 PM | comments (3) | trackback (x) |

コメント

よく考えてみたら、この夢って、オリジナル「夢十夜」(夏目漱石)の
第一夜と第二夜のチャンポンじゃないか。。

| ぴろやん | EMAIL | URL | 2005/06/17 10:11 PM | nuWUNIpI |

どうも、人でない女性が夢に現れる事が多いんですけど、
これって夢占的にはどうなんでしょうね?(^^;
女性恐怖症の現れでしょうか。。

| ぴろやん | EMAIL | URL | 2005/06/17 09:30 PM | nuWUNIpI |

ワタスも夢見る派どす。。

| む | EMAIL | URL | 2005/06/17 01:00 PM | a.9sLOjQ |

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